冷蔵発酵をさせる場合の注意点やコツ

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パン生地を冷蔵庫を利用し発酵させる場合、翌日生地を復温させるのに、そのままと、分割後とでは、どちらが良いのでしょうか? 冷蔵発酵させる場合、イースト量は発酵時間によって調整した方が良いのでしょうか? 冷蔵発酵をさせる場合の注意点やコツがあれば教えてください。

回答
  • 伊原靖友シェフ

    パン焼き小屋Zopf 伊原靖友シェフ

    復温については、そのままでも分割後でも品質に差は出ないと思うので、自分の作業スケジュールに合うやり方を選ぶと良いと思います。そもそもの話になってしまいますが、“復温をさせる理由があるのか”を考えてみても良いかもしれないですね。当店ではフランスパンなどを冷蔵発酵させていますが、基本的には復温はしていません。冷蔵庫から出したらそのまま分割に入り、工程の中で自然に温度が上がっていく感じです。
    ただ、生地が冷たいままだと発酵してこないため、早く温度が上がるような状態にする、生地玉冷蔵の場合はガス抜きや薄くする工程を入れて品質を上げるなど工夫はしています。

    イーストの量は、内相や味に影響を与えるため、一番おいしいと思う量からあまり変えない方が本来は良いかと思います。発酵時間の制御方法は、“イースト量を変える”、“生地温度を変える”の2つ。生地温度を変えるには、捏上温度を変える、ドウコンディショナーを使い温度設定を変えるなどの方法があります。イースト量を変えるだけでは生地の発酵が不安定になってしまうこともあるので、いろいろと試してみてください。

    注意点やコツですが、業務用冷蔵庫は、冷気の吹き出し口に近いところが最も冷たいということがあります。そのため庫内温度を4℃に設定しても、どこも4℃というわけではなくて。昔、冷蔵発酵生地をいくつも作っていた時は、冷蔵庫の中に、穴を空けたプラ板やダンボールで仕切りを作り、仕切りの位置や穴の大きさによって、本来の庫内温度より少し高い温度帯を作っていました。
    冷蔵庫内の温度に合わせた生地量(例えば10kg作ったら2㎏ずつや、500gずつ)に分け、生地量によって冷蔵庫内で置く位置を決めるのも良いと思います。当店も、フランスパン3kgの時は吹き出し口近くに、少ない時は遠くになど、置く位置が決まっています。冷え方が変わってしまわないように、自分の作業量や製造量に合わせた工夫が必要かと思います。

    冷蔵庫内の温度が何度であるかではなく、生地の温度がどう下がって、また上がっていくのかを知ることが大事だと思います。これは、自分のお店で、データを取るしかないですね。

  • 井上克哉シェフ

    ブーランジュリー・オーヴェルニュ 井上克哉シェフ

    復温については、そのままでも分割後でも、工程に合った方法で良いと思います。分割後に復温させた方が早いですが、場所も取りますし、お店に合った方法を取るのが良いかと考えます。大事なことは、復温をしっかりさせることです。
    イースト量については、当店では変えていませんが、4日以上冷蔵するのであれば増やした方が良いと思います。
    冷蔵発酵は、生地の乾燥などを防げば便利な方法だと思います。いろいろと試してみてください。

  • 西山重明シェフ

    森のベーカリー&カフェ(旧:パン工房マローネ) 西山重明シェフ

    復温について
    少しでも復温が早い方が良いため、分割後に復温させた方が良いと思います。
    また、捏上後に生地のまま冷蔵発酵と、分割後玉冷蔵についてはどちらでも良いと思いますが、私見では分割サイズが大きいものやリーンな生地は、生地のまま冷蔵発酵をさせ、その後に分割した方が、復温の時間が少なく、生地へのダメージも少ないと思っています。
    乳製品・油脂・砂糖・卵などを使った生地は玉冷蔵(または冷凍)しております。

    イースト量について
    当店では、労務管理の観点から冷蔵(冷凍)生地を作成し最大で一週間使用しております。その場合、通常の配合よりも、給水・イースト・塩の量を10%程度減らしております。目指すパンの姿をどのように考えるかによって多少の変更を加えるのは、ありだと思います。

    ちなみに、冷蔵の温度帯を最適化することの方が、冷蔵保存の良し悪しや作業性に大きく関わってくると思います。当店では、冷蔵(冷凍)生地用に、0℃:冷蔵発酵用(生地そのもの、玉生地)、-3℃:玉生地発酵ストップ用、5℃:中種冷蔵保管用、16℃:フランス生地復温用と、異なる温度設定の冷蔵庫を用意しております。

    注意点・コツについて
    冷蔵発酵生地の捏上温度は、ストレートの温度よりも3℃くらい下げて捏ね上げています。
    生地の温度をホイロ前までになるべく上げ下げしない方が、最終製品への影響が少ないと思います。
    生地は空気に触れないように、2重に袋に入れると良いと思います。

  • 割田健一シェフ

    ビーバーブレッド 割田健一シェフ

    どんな商品をどう並べたいかや、どのくらい生産したいかの根本的な話になりますね。いろいろと試していく中で、自分達のスケジュールや、お客様の要望も含めて、“自分の店はこのやり方が良い”と収めていくのが良いと思います。どちらが良いというよりは、どちらのやり方もあるという回答です。もっと言えば、冷蔵発酵には他にもパターンがあります。
    当店だと、仕込んだ生地を冷蔵発酵させ、翌日に戻して分割から始める方法と、生地玉冷蔵の2つのパターンを取っています。また、成形まで行った生地をドウコンディショナーでゆっくり発酵させる成形冷蔵もあります。朝来たらすぐに窯入れできるようにしています。
    お客様から、「冷蔵発酵は嫌だ」「良い」などの意見は聞かないですよね。そのため、お客様の要望を考えてみると良いと思います。例えば焼きたてを小まめに出してほしかったら、全部成形しておいて、時間を見ながら焼いていくやり方が合うと思います。どうしたいかが一番ですね。

    イースト量は、生地が発酵した方が良いので、調整する必要があると思います。当店の冷蔵発酵の菓子パンの場合、成形後すぐホイロに入れ、焼き上がりの一時間から一時間半後には店頭に並べるため、イースト量は多くしています。砂糖などの副材料が沢山入っていて、イーストが多くても風味に影響しにくい部分もありますし。もちろんイースト量が少ないと美味しいですが、その分発酵にすごく時間がかかってしまいます。そこの塩梅は決めなきゃいけないと思います。

    注意点やコツは、バゲットなどのハード系は、温度を戻し切れずに冷たいまま発酵させると、膨らまないため、成形時の生地温度の管理や把握をしっかりと行うことですね。当店は成形時18℃と決め、それよりも低かったら少しホイロに入れておくなどしています。経験から、分割してホイロに何分入れておくと18度くらいになるというようなデータが取れており、基本的に毎日同じリズムにはなっています。ルーティンでできる工程を増やした方が、仕事がしやすいと思います。

  • 谷口佳典シェフ

    ブーランジェリー・フリアンド 谷口佳典シェフ

    まず、当店では粉のタンパク量・生地の力・水分量等による生地の強度によって、弱い生地はブロック冷蔵、強い生地は分割後冷蔵と使い分けています。
    ブロック冷蔵の場合、ブロックのまま復温させ、その後に分割すると生地に力が付きます。分割してから復温させると加工硬化が弱くなるため、コシを付けたくない場合はこちらの方が良いと思います。加工硬化と構造緩和のバランスの取り方で、自分の提案したい食感によって変えています。
    そのため、どちらが良いということはありません。自分の着地点がどこかを見定め、それに対する手段として用いるものだと考えておりますので、正解はないと思います。

    冷蔵発酵におけるイースト量については、発酵時間が長い生地はイーストが少なくなるというのはストレートにおけるセオリーと同じであると考えています。また強度が弱い生地はイースト量を少なくしています。